第25歩:鉅子(きょし)の罠 ―― 墨家が滅んだ「権力集中」という致命的バグ
これまで私たちは、墨家の思想がいかに強力なOSであるかを語ってきた。しかし、私たちは盲目的な信者ではない。システムを実装するエンジニアとして、古代の墨家が消滅した「もう一つの理由」――彼らの内部マネジメントに潜んでいた設計ミスを直視しなければならない。彼らはなぜ組織として自壊したのか。その最大の原因は「鉅子(きょし)」と呼ばれるトップへの、極端な権力集中である。
1. 「尚同」が引き起こした単一障害点 墨家には「尚同(しょうどう)」というルールがあった。これは「下位の者は、上位の者の正しい判断に必ず従う」という強烈なトップダウンの教えである。鉅子の命令は絶対であり、凄まじい統率力を誇った。しかし、これはシステム設計において最も危険な「単一障害点(そこが止まれば全体が停止する弱点)」である。鉅子が判断を誤ったり、後継者争いが起きたりした時、強固すぎるトップダウンは組織全体の致命傷となる。事実、墨家は内部屋分裂によって自ら崩壊してしまった。
2. 我々の組織は「分散型」で駆動する 論語に「過ちて改めざる、これを過ちという」とある。私たちはこの失敗を絶対に繰り返さない。カリスマ的なリーダーへの過度な依存は、組織の思考を停止させる。現代のマネジメントにおいて、私たちは絶対的な「鉅子」を置くのではなく、メンバー全員が自らの胸に指矩を持ち、一人ひとりが自律的に「お天道様に恥じない判断」を下す組織を目指す。リーダーの役割は権力で支配することではなく、全員の指矩が狂っていないかを相互に監査し合う「ネットワークの維持」へとシフトするのだ。
コメント
コメントを投稿