第10歩:兼愛交利(けんあいこうり) ―― エゴを捨てた最強の互助ネットワーク

 天志(公の利益)に従う組織は、具体的にどのような形になるのか。墨家が導き出した究極のシステムが「兼愛交利(けんあいこうり)」である。

1. 「愛」という言葉の誤解 「兼愛」という言葉を聞くと、無条件の優しい愛や、自己犠牲を伴うボランティアのように聞こえるかもしれない。しかし、墨家は冷徹な実務家集団である。彼らの言う愛とは、感情論ではなく「自他を区別せず、相手の城(システム)も自分の城と同じように大切に扱う」という合理的な行動ルールのことだ。

2. 利益を循環させる交利 そして兼愛は、必ず「交利(互いに利益を与え合う)」とセットで駆動する。自分の技術やリソースを提供して相手を助け(兼愛)、それによって相手も自分を助けてくれる(交利)。特定の権力者が利益を独占するのではなく、フラットなネットワーク全体で利益を循環・最大化させる。これは現代の「オープンソース」や「分散型ネットワーク」の概念と完全に一致する、極めて生存確率の高い強靭な互助システムなのだ。

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